2026.8.7

社外取締役に求められる対応と参照すべき指針

社外取締役の法的地位と善管注意義務

社外取締役も会社法上の取締役である以上、社内取締役と同様に、会社に対して善管注意義務と忠実義務を負います。

「社外」という立場ゆえに義務が軽減されるわけではなく、社外取締役に期待される独立性・客観性・専門知識が、義務履行の具体的な内容に反映されることになります。


善管注意義務の核心は、「その地位・職務にある者として通常求められる注意をもって職務を遂行すること」です。

取締役会における意思決定に際し、十分な情報収集と合理的な検討プロセスを経た上で判断する限り、結果として会社に損失が生じたとしても取締役の責任は問われません(経営判断の原則)。


社外取締役には、コンプライアンス違反を防止するための「守り」と、企業価値向上のための意思決定に貢献する「攻め」の両方の役割がありますが、それぞれの場面で「独立した立場から適切な問いを立て、必要な情報を取得し、合理的なプロセスで判断する」という営みを継続することが、義務を果たすことにつながります。


そのことを前提に、社外取締役が職務を遂行するにあたり、具体的な行動指針として参照すべき公的文書を紹介します。

社外取締役が参照すべき主要なガイドライン

「コーポレートガバナンス・コード(2021年6月・東京証券取引所)」の原則4-8は、「独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべき」と定めています。

稼ぐ力の議論においても社外取締役の関与が明示的に求められており、その役割の幅は年々広がっています。


「社外取締役の在り方に関する実務指針(社外取締役ガイドライン)(経産省・2020年)」は、「心得1」として、社外取締役の最も重要な職務は「経営の監督」であるとし、経営陣から独立した客観的な立場での監督を主たる責務と位置づけています。


「社外取締役ガイドライン(日弁連)・2023年」では、不祥事への対応、第三者委員会の関与、問題が不明確な段階での自ら調査の可能性まで踏み込んでいます。


「上場会社における不祥事対応のプリンシプル(日本取引所自主規制法人・2016年)」は、不祥事の原因究明に際し、必要十分な調査範囲の設定と根本原因の解明を強調しています。

社外取締役としては、調査体制の選択の客観性確保に積極的に関与することが求められます。


「グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(グループガイドライン)(経産省・2019年)」では、主として公表を要するような重大な事案を前提として、有事においては社外取締役や独立社外監査役(独立社外役員)が、第三者委員会の設置要否を含む調査体制の選択・運営に主導的な役割を担うべきとしています。


「企業買収における行動指針(経産省・2023年)」では、買収対象会社の社外取締役が取るべき行動として、①企業価値向上・株主共同の利益の確保、②経営陣からの独立した意思の確保、③透明性の確保等に留意し、取締役会において買収提案を真摯に検討することを求めています。

場面別にみる社外取締役の実践的対応

不正発覚局面では、不正の存在を疑わせる端緒があった場合、社外取締役は調査体制確立の判断に積極的に関与し、執行部門主導の内部調査に委ねることが適切かどうかを独立した立場から見極める必要があります。

第三者委員会の設置が必要な事案では、その構成・スコープ・運営について独立した視点から監督することが求められます。

また、内部通報制度の実効性の確認や、通報者保護の観点からの対応確認も重要な職務です。


損害賠償事案では、損害賠償請求を受けた場合、社外取締役は、執行側の対応が経営判断の原則に照らして適切かを監督することが中心的な役割となります。

和解の場面では、和解案の妥当性について弁護士の意見を徴取した上で検討が行われているかを確認し、法的責任の所在が不明確なまま過大な経済的負担を受け入れるような和解には異議を述べます。


不正発覚局面では、不正の存在を疑わせる端緒があった場合、社外取締役は調査体制確立の判断に積極的に関与し、執行部門主導の内部調査に委ねることが適切かどうかを独立した立場から見極める必要があります。

第三者委員会の設置が必要な事案では、その構成・スコープ・運営について独立した視点から監督することが求められます。

また、内部通報制度の実効性の確認や、通報者保護の観点からの対応確認も重要な職務です。


損害賠償事案では、損害賠償請求を受けた場合、社外取締役は、執行側の対応が経営判断の原則に照らして適切かを監督することが中心的な役割となります。

和解の場面では、和解案の妥当性について弁護士の意見を徴取した上で検討が行われているかを確認し、法的責任の所在が不明確なまま過大な経済的負担を受け入れるような和解には異議を述べます。

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2026年6月5日号(vol.316)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 今井 慶貴

今井 慶貴
(いまい やすたか)

一新総合法律事務所
理事長/弁護士

出身地:新潟県新潟市
出身大学:早稲田大学法学部

新潟県弁護士会副会長(平成22年度)、新潟市包括外部監査人(令和2~4年度)を歴任。
主な取扱分野は、企業法務(労務、契約、会社法務、コンプライアンス、事業承継、M&A、債権回収など)、事業再生・倒産、自治体法務です。
現在、東京商工リサーチ新潟県版で「ズバッと法談」を連載中です。