2026.10.8

「就活セクハラ」に対する対応が義務化されます

はじめに

昨今、様々な形のハラスメントが社会問題となっており、その対策強化が叫ばれていますが、法律の分野では令和7年6月に、労働施策総合推進法等の一部を改正する法律が可決・公布されました。その一つとして、いわゆる「就活セクハラ」についても、事業主が雇用管理上必要な措置をとることが義務付けられた内容の改正がなされており(改正男女雇用機会均等法)、令和8年10月1日に施行されます。


今回は、この就活セクハラに関する改正内容の概観を確認してみたいと思います。

就活セクハラとは

そもそも就活セクハラとは、事業主が雇用する労働者による性的な言動により求職者等による求職活動等が阻害されるものといわれていますが、従来の男女雇用機会均等法では、セクハラ防止措置義務の対象は社内の労働者のみであり、採用活動中の学生や応募者(すなわち求職者)は対象外でした。

しかし今回の改正で、求職者も保護の対象に含まれたということになります。

なお、就活セクハラは異性に対するものだけでなく同性に対するものも含まれます。


就活セクハラが問題とされる場面は、想像以上に広範囲です。

企業においては就職説明会、OBOG訪問や採用面接はもとより、インターンシップや実務研修・実習の場面でも就活セクハラは起こり得るものであり、実際に、インターンシップ中においては「性的な冗談やからかい」や「食事やデートへの執拗な誘い」が多く報告され、高い割合を占めているというデータもあります(厚生労働省「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査報告書」)。

採用担当者だけの問題ではなく、非正規労働者を含む一般の労働者を含めた、全従業員規模での対策が必要と言えます。

事業主が講じるべき義務

それでは、具体的に事業主が講じるべき義務の内容をみていきましょう。


まず、事業主は、労働者が就活セクハラの相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、不利益な扱いをしてはならないこととされました(改正雇用機会均等法13条2項)。


さらに具体的な内容として、厚生労働省が令和8年2月に指針を公表しています(就活セクハラ指針)。

就活セクハラ指針では、大きく以下の4つの措置義務が示されています。

①事業主の方針等の明確化、周知・啓発

就活セクハラの内容、及び就活セクハラを行ってはならない方針を明確にし、その旨をすべての労働者に周知啓発する必要があります。

また同様に、就活セクハラを行った者には厳正に対処する方針、及びその対処の内容を就業規則等に規定し、周知啓発する必要があります。


さらに、求職活動等に関するルールを明確化し、労働者のみならず求職者にも周知啓発することも必要です。

たとえば、求職者との面談(採用面接に限らない)を行う際のルールを定めたうえで、採用担当者のみならず広く労働者に対して周知し、必要に応じて研修等を実施して浸透を図る必要があります。

求職者に対しても、企業ホームページやパンフレットにおいて面談等に対する留意事項を示しておく必要があるでしょう。

②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

相談窓口設置・フローの策定など、社内の相談体制を整備するとともに、求職者にも分かる形で相談先を周知する必要があります。

求職者にも周知しなければならない点で、社内セクハラ対策とは異なる点がありますので注意が必要です。


求職者に対しては、相談窓口の連絡先やその手段(メールなど)、受付時間、通報対象行為、選考に
は影響がないことなどを周知するとよいでしょう。

③就活セクハラに係る事後の迅速かつ適切な対応の実施

万が一就活セクハラが発生した場合の対応について、フロー策定などを通じて適切に整備を行っておく必要があります。

事実確認の方法(担当者の選定も含む)、被害者に対する配慮のための措置、行為者に対する措置、再発防止措置などが考えられます。


すでに社内セクハラに関してフローを策定している場合には、それを転用することも可能な面が多いといえます。

ただし、相談者(被害者)が求職者である、すなわち社外の人であることから、異なる対応が必要な点が生じてくることには十分に注意してください。

たとえば、相談申請があったものの、当該相談者と連絡が付きづらくなるということもあり得るため、事前に連絡手段や方法を具体化しておくことや、相談者への謝罪及び配慮に関する事項については一層の慎重さをもって臨むといったことは、検討しておくべきでしょう。

④あわせて講ずべき措置

上記のほか、相談者や行為者等のプライバシーに関する保護措置を講じること、および手続(事実確認等)への関与を理由とした不利益取り扱いを禁止する旨も、規定のうえで周知する必要があります。

おわりに

冒頭にも述べましたが、最近は様々なハラスメントが発生しており、その対策の必要性も日々強くなっているといえます。法律もこの数年で次々と制定・改正されており、企業担当者としては対応に負担に感じる面もあるかもしれませんが、必要な体制を整備することは求職者や従業員の安心や信頼につながり、ひいては企業価値を向上するものといえます。

ぜひ前向きに取り組んでいただければと思います。


紙面の都合上、今回ご紹介した内容はあくまでも一部にとどまるものですので、詳細な内容や具体的対策を知りたいという方は、ぜひ当事務所にご相談ください。


参考:
ビジネス法務2026.7「 カスハラ・就活セクハラ」対応のポイント
厚生労働省令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書(PwCコンサルティング合同会社)

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2026年8月5日号(vol.318)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。

この記事を執筆した弁護士
弁護士 中澤 亮一

中澤 亮一
(なかざわ りょういち)

一新総合法律事務所 
弁護士

出身地:新潟県南魚沼郡湯沢町
出身大学:早稲田大学法科大学院修了
国立大学法人における研究倫理委員会委員、新潟県弁護士会学校へ行こう委員会副委員長などを務めている。
主な取扱分野は、離婚、金銭問題、相続。また、企業法務(労務・労働事件(企業側)、契約書関連、クレーム対応、債権回収、問題社員対応など)などにも精通しています。複数の企業でハラスメント研修、相続関連セミナーの外部講師を務めた実績があります。

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