2026.10.1
公益通報者保護法の改正と内部通報窓口(弁護士 今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の理事長・企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」を引用したものです。

第113回のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、「公益通報者保護法の改正と内部通報窓口」です。
その1.12月から通報者保護のルールが変わる
公益通報者保護法の改正法が2026年12月1日に施行されます。
改正の柱は、①事業者の体制整備の徹底、②通報者の範囲の拡大、③通報阻害要因への対処、④不利益取扱いの抑止・救済の強化の四つです。
目を引くのは④です。
通報から1年以内(又は事業者が通報を知ってから1年以内)の解雇・懲戒は、通報を理由とするものと推定され、立証責任が事実上、通報者から事業者へ移ります。
違反すれば、行為者個人に6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金、法人にも3000万円以下の罰金の対象となります。
通報があった場合の労働者の処遇を誤ると刑事罰に処せられるおそれがありますので、とにかく慎重に対応しなければなりません。
②では、従業員、役員、退職1年以内の従業員に加えて、業務委託関係にあるフリーランス(委託終了後1年以内の者も含む)が保護対象に加わり、③では通報者の探索と通報妨害が明文で禁止されました。
なお、通報対象となるのは、犯罪行為や過料対象行為または最終的に刑罰もしくは過料につながる行為ですので、単なるハラスメントはそれが犯罪行為等に該当しない限りは対象外です。
その2.内部通報窓口は顧問弁護士でよいか?
常時使用する労働者が300人を超える事業者には、内部通報体制の整備と公益通報対応業務従事者の指定が義務づけられています。
改正法では体制の周知が義務として明記され、従事者を指定していないこと自体が通報の対象となり、消費者庁による立入検査権や報告懈怠・虚偽報告、検査拒否に対する刑事罰(30万円以下の罰金)も加わりました。
問題は、内部通報窓口を誰に託すかです。
事業者の内部だけでなく、外部に設置することも可能であり、通報受付専門会社や外部の弁護士に委託することも考えられます。
顧問弁護士については、消費者庁の指針によれば、顧問弁護士に内部公益通報をすることを躊躇する者が存在し、そのことが通報対象事実の早期把握を妨げるおそれがあることにも留意すること、また、その旨を明示する等により、窓口の利用者が通報先を選択するに当たっての判断に資する情報を提供することが望ましいとしています。
最後に一言。
最後に一言。
顧問弁護士は、仮に中立・公正な立場で内部通報窓口や事案の調査を担当した場合、その後の会社の利益を守るための活動は利益相反により困難となります。
実際にも、弁護士が懲戒トラブルに巻き込まれた事例が公表されています。
~窓口は、独立してこそ、機能する。~
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。
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