2017.11.29
「よそとは取引しないで」は独禁法違反?エアビー社に公取委が立ち入り検査(弁護士下山田聖)
企業法務チーム所属の弁護士 下山田 聖 です。
民泊仲介サイト最大手のエアビーアンドビー社が、民泊の代行業者に対し、他社の仲介サイトを利用しないように求めていたとして、独占禁止法(独禁法)違反の疑いで公正取引員会から立ち入り検査を受けたという報道がありました。
独禁法は大企業が規制の対象になるというイメージがあるかもしれませんが、最近では中小企業が摘発されることも増えています。
独禁法とはどのような法律で、企業のどのような行為を規制しているのか、解説いたします。
独禁法は正式名称を「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」といい、自由公正な競争を促進し、経済の健全な発達を目指すことを目的としています。
自由な競争を促進するために企業活動に対して制約を課すというと矛盾するように感じるかもしれません。
しかし、純粋に自由な企業活動が必ずしも経済の健全な発達に結び付くとは限りません。
たとえば、ある商品を売っている企業が示し合わせて一斉に値上げをしたとすれば、一般消費者はその不当に値上げをした価格で商品を購入せざるを得なくなります。
本来、価格は企業間の競争によって決まるものですが、企業が示し合わせて価格を決定することによって競争がなくなり、企業が不当な利益を得ることになります。
これはカルテルといわれる行為で、独禁法では「不当な取引制限」と呼ばれ、禁止されています。
また、ある商品について大きなシェアを有している企業が、他の企業の新規参入を妨害するために、その企業を排除するなどの行動に出ることも考えられます。
これは、「私的独占」と呼ばれるものであり、新規参入を妨害することによって、その市場における競争がなくなってしまうので、独禁法において禁止されています。
報道によると、エアビーアンドビー社は、民泊の代行業者に対して、他の仲介サイトと取引しないように求めていた疑いがあるとされています。
本来、代行業者はどのような仲介サイトとも取引をする自由があります。
しかしながら、エアビーアンドビー社のような大手の会社が他と取引しないように求めたとすれば、代行業者はそのような求めに応じる可能性が高いと考えられます。
その反面、他の仲介サイトは代行業者との取引の機会を失い、最終的には市場から排除されてしまうおそれがあります。
これは、独禁法上の「不公正な取引方法」の一つである「排他条件付取引」に該当する可能性があるものです。
独禁法の主な類型には「不公正な取引方法」のほかに「不当な取引制限」、「私的独占」があり、独禁法の三本柱といわれています。
「不当な取引制限」や「私的独占」は市場に与える影響が大きいものを禁止しています。
他方で、「不公正な取引方法」は市場に与える影響がそこまで大きくないものを禁止する類型で、今回問題となった排他条件付取引のほかに、抱き合わせ販売や優越的地位の濫用といった雑多なものを含んでいます。
もし企業が独禁法違反で摘発されれば、財産的な損害を受けるだけでなく、今まで築いてきた会社の社会的な信用が失われる可能性もあります。
コンプライアンスにのっとった企業経営を実践していただくために、弁護士を含む専門家と継続的にご相談いただくことをお勧めいたします。
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