2019.6.5

120 年ぶり!民法大改正 重要ポイント解説 vol.8~売買に関する改正点②~

 

売主の瑕疵担保責任

前回は、売主の瑕疵担保責任のうち、新民法564条までを取り上げましたので、今回は、565条以下を取り上げます。

 

前回記事:120 年ぶり!民法大改正 重要ポイント解説 vol.7~売買に関する改正点~

 

売主が買主に移転した権利の契約不適合の場合の瑕疵担保責任

売買の目的たる権利が契約内容不適合の場合にも、新民法562条ないし564条の規定が準用されます。

 

これにより、売買の目的たる権利が契約内容不適合の場合であっても、

 

①買主側から追完請求ができること

②買主側から代金減額請求ができること

③買主が契約内容不適合を知っていた場合であっても損害賠償請求及び契約解除ができること

 

等が、明文化されました。

 

 

120 年ぶり!民法大改正 重要ポイント解説 vol.8~売買に関する改正点②~

 

 

瑕疵担保責任の追及期間

旧民法では、売主の瑕疵担保責任の期間は、買主が善意(瑕疵を知らなかったとき)は「事実を知った時」から1年、買主が悪意(瑕疵を知っていたとき)は「契約の時」から1年、とされていました(旧民法564条)。

 

そして、判例上、買主が瑕疵担保責任を追及するには、この期間内に、「売主に対し、具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の根拠を示す」必要があるとされており、買主の側の時間的な余裕がない法制度となっていました。

 

そのため、新民法では、買主が契約内容不適合を「知った時」から1年以内に不適合である旨を通知すれば、瑕疵担保責任を追及することができるとの改正がなされました(新民法566条本文)。

 

これにより、従来とは異なり、買主としては契約内容不適合である旨を1年以内に通知すればよいことになりました。

 

 

 

120 年ぶり!民法大改正 重要ポイント解説 vol.8~売買に関する改正点②~2

 

 

 

また、同条ただし書で、売主が引渡時に契約内容不適合を知っていたか、または重大な過失により知らなかったときは、同条本文の期間制限の適用がないことになり、従来よりも買主の権利行使が保護される改正となっています。

 

なお、商人間の売買について、買主は、目的物を受領後遅滞なく検査しなければならないこと及びその検査の結果、目的物の瑕疵や数量不足があった場合には、直ちに売主に対して通知をしなければ当該契約の解除や代金減額請求・損害賠償請求ができないことを規定している商法526条の規定は維持されていますので、商人間の売買については注意が必要です。

 

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 下山田聖
<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2018年8月5日号(vol.223)>
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。