120 年ぶり!民法大改正 重要ポイント解説 vol.6~債務不履行に基づく契約解除~

 

民法改正重点解説の第6回目です。今回は、危険負担について取り上げます。

旧民法における定め

(1)危険負担とは、双務契約(契約の両当事者が、互いに権利を有し、義務を負う契約。)における一方の債務が履行不能に陥った場合に、もう一方の債務について、これを履行する必要があるか否か、という問題についての定めです。

 

(2)ア 旧民法536条では、同条1項「双務契約において、当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。」、同条2項「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。」と規定していました。

 

イ 具体的には、輸入ビール10ケースを売買契約の目的物とした場合に、そのビールを輸入する船の座礁により目的物を引き渡すことができなくなったときには、売主(履行不能になった引渡義務を負う債務者)は、代金を買主から受け取る権利を有しないということです。

 

(3)また、「特定物に関する物権の設定又は移転」の場合(旧民法534条)及び「停止条件付双務契約」で条件成就未定の場合(旧民法535条)には、上とは別の定めが置かれていました。

新民法の定め

(1)新民法では、旧民法534条及び535条の規定は削除され、新536条として、同条1項「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。」、同条2項「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。」との定めが設けられました。

 

(2)新民法536条1項により、当事者双方に帰責事由なく履行不能になった場合であっても、反対給付は当然には消滅しないこととなったので、これを確定的に消滅させるには契約の解除をすることが必要になります。

しかしながら、これと反する当事者の合意までも排除されるものではないので、契約当事者の合意により、契約を解除することなく反対給付を確定的に消滅させることは可能です。

 

(3)また、従来は別個の定めがされていた特定物に関する物権の設定等についても、旧民法の規定が削除されたことにより、新民法5 3 6 条1 項の規律に服することになります。

 

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 下山田聖
<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2018年3月5日号(vol.218)>
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。