120 年ぶり!民法大改正 重要ポイント解説 vol.7~売買に関する改正点~

 

売主の瑕疵担保責任

旧民法においては、売買の目的物に瑕疵があった場合について、その瑕疵の内容に応じて、売主が負うべき責任(瑕疵担保責任)を規定していました(旧民法561条ないし571条)。

 

この瑕疵担保責任の性質については、民法学者の間で伝統的に議論がなされていたのですが、新民法では、この瑕疵担保責任を契約責任であると位置づけ、これに沿う形での改正がなされています。

 

これにより、従来の瑕疵担保責任については、債務不履行の一類型であるとの整理がなされることになります。

 

また、新民法では、「瑕疵」という単語に代わって「契約の内容に適合しないもの」との表現を用いています。

 

買主の追完請求権(新民法562条)

目的物の「種類、品質又は数量」について、契約内容に適合しない場合には、買主は、修補又は代替物の引渡し等の履行の追完を請求することができます(同条1項)。

 

 

売主の瑕疵担保責任①

 

 

ただし、買主に不相当な負担を課すものでないときは、売主は、買主が請求した方法以外での履行の追完をすることが可能です。

 

また、契約内容不適合状態が買主の責任で生じた場合には、追完請求は認められません(同条2項)。

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買主の代金減額請求権(新民法563条)

前述の追完請求を前提に、相当の期間内にその履行の追完がなされないときには、買主は、売買代金の減額を請求することができます(同条1項)。

 

ここで注意が必要なのは、条文上、代金減額請求には売主の帰責事由が不要となっている点です。

 

すなわち、買主からの代金減額請求があった場合には、売主は、「契約内容不適合が売主の責任で生じたものではない」旨の反論をすることはできません。

 

例外的に追完請求の催告が不要となる場合としては、

 

①追完が不能であるとき

②売主が追完を拒絶したとき

③一定の期間内に履行がされなければ契約目的が達成できない場合において、その期間が経過したとき

④その他追完の催告をしても追完がなされる見込みがないとき

 

の4つが定められています(同条2項1号ないし4号)。

 

 

売主の瑕疵担保責任②

 

 

また、契約内容不適合状態が買主の責任で生じた場合には、買主は、これを理由として代金減額請求をすることはできません(同条3項)。

 

買主の損害賠償請求及び解除権の行使(新民法564条)

新民法において旧来の瑕疵担保責任が契約責任として整理された結果、これを理由とする買主の損害賠償請求は、債務不履行に基づく損害賠償請求として、解除は債務不履行に基づく解除として位置づけられます。

 

旧民法下においては、瑕疵担保責任に基づく解除については、瑕疵があることにより「契約の目的を達することができないとき」にのみ可能である等の条件が付されていましたが(旧民法570条、566条1 項)、新民法においてはそのような制限はなくなりました。

 

また、解除の場合には、解除の一般的な準則に従う必要があるので、催告解除の場合には、先に追完の催告をする必要があります。

 

次回は、新民法565条以下の内容について取り上げます。

 

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 下山田聖
<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2018年7月5日号(vol.222)>
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。