2018.11.1
スポーツ中の事故。怪我をさせた側に法的責任はあるのか?(弁護士:渡辺伸樹)
先日、「バドで左目負傷、ペア女性に1300万賠償命令」というニュースを目にしました。
報道によれば、バドミントンでダブルスを組んだ味方のラケットが目に当たって大けがをしたとして、40歳代の女性がペアの女性に損害賠償を求めた訴訟で、高等裁判所が、ペアの女性の全責任を認めて約1300万円の支払いを命じる判決を言い渡したとのことです。
今回の判決についてネット上では「おちおちスポーツができなくなる」「スポーツをする以上ケガは覚悟すべきだ」など否定的な意見も目にします。
具体的な判決理由については判決文が公開されるのを待ちたいと思いますが、スポーツ中に起きた事故だからといって、必ずしも加害者が免責になるわけでなく、責任を問われる例があるということは理解しておかなければいけません。
過去にも、スキーヤー同士の衝突事故で賠償を命じた例など、スポーツ中に起きた事故で、一方当事者の責任を認めた例があります。
しかも、今回のケースでは、報道によれば後衛をしていたペアの女性の全責任を認めたということであり、この点も注目すべき点です。
一般に何らかの事故が発生して加害者が賠償責任を負う場合でも、被害者に何らかの落ち度があれば過失相殺という処理がされ、責任は軽減されます。
交通事故でお互いの過失割合を90:10とか60:40などと決めるのがまさにそれです。
私も、学生時代にバドミントンのダブルスの試合をした経験ありますが、前衛と後衛の中間に飛んできたシャトルを追いかけて両者が接触することは少なからずある気がします。
今回のケースでは、報道によると後衛の女性の全責任を認めたということですが、前衛の動きやポジショニングに問題はなかったのか、この点について、裁判所がどのような検討をしているのかも気になるところです。
長くなりましたが、今回の報道をうけて、最低限、肝に銘じておかなければならないのは、スポーツ中の事故であっても、法的な賠償責任を問われる例があるということです。
重傷事案では今回のケースのように賠償額が1000万円を超えることもあります。
現在、販売されている個人賠償責任保険(共済)の中には、法的な賠償責任を伴うスポーツ中の事故をカバーするものがあります。
すでにご加入の火災保険・傷害保険・自動車保険等に月数百円の保険料をプラスして、特約として附帯できることもあります。
スポーツを安心して楽しむためには、万が一、自分自身(あるいはお子様)が加害者になってしまった場合に備え、こうした保険に加入することを検討してみてもよいかもしれません。