会社法の改正(弁護士今井慶貴)

「会社法の一部を改正する法律」が平成26年6月20日に成立しました。

 

この改正は、株式会社をめぐる最近の社会経済情勢に鑑み、企業統治(コーポレート・ガバナンス)の強化を図ったものです。

どちらかといえば、大企業向けの法改正といえるでしょう。

 

社外取締役等による株式会社の経営に対する監査等の強化

第1のポイントは、社外取締役等による株式会社の経営に対する監査等が強化されたことです。

1 監査等委員会設置会社制度の新設

社外取締役が過半数を占める「監査等委員会」が、取締役の職務の執行の監査を行うとともに、株主総会において取締役の選解任及び報酬について意見を述べることができる制度を新設しました。

なお、大企業への社外取締役の義務化は定められませんでした。

2 社外取締役等の要件の厳格化

株式会社の親会社の取締役等でないことや株式会社の取締役等の近親者でないこと等を追加し、要件を厳格化しました。

3 会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定権の監査役(会)への付与

議案の内容の決定権を取締役又は取締役会が有するものとしている現行法の規律を改め、その決定権を監査役又は監査役会に付与することとしました。

株式会社及びその属する企業集団の運営の一層の適正化

第2のポイントは、株式会社及びその属する企業集団の運営の一層の適正化を図ったことです。

1 多重代表訴訟制度

株式会社の完全親会社の株主が、株主代表訴訟により、その完全子会社の取締役等の責任も追及することができる制度を新設しました。

2 組織再編等の差止請求制度の拡充

株式会社が法令又は定款に違反する組織再編等を行うことによって株主の利益が害されることを防止するため、株主による組織再編等の差止請求制度を拡充しました。

3 詐害的会社分割における債権者保護

債権者を害する態様の会社分割において、分割会社(分割対象となった会社)に残された債権者が、分割会社だけでなく承継会社に対しても債務の履行を請求することができる旨の規定を新設しました。

 

改正法の施行期日は、公布日から1年6月を超えない範囲内で政令で定める日とされていますが、平成27年4月施行となる見通しのようです。

※平成27年5月1日より施行されました。

 

弁護士 今井 慶貴

 

<初出>

・顧問先向け情報紙「こもんず通心」2014年7月1号(vol.153)企業・団体チーム18

・顧問先向け情報紙「こもんず通心」2014年7月31号(vol.155)企業・団体チーム19

※一部追記をしております。

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。