2022.6.3
メールでもクーリング・オフ!(弁護士:今井 慶貴)
※この記事は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士今井慶貴が2017年4月より月に一度連載しているコラム「弁護士今井慶貴のズバッと法談」の引用したものです。
第61回のテーマ
この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。
気楽に楽しんでいただければ幸いです。
今回のテーマは、メールでもクーリング・オフ!です。
その1.クーリング・オフの方法が増える
本年(令和4年)6月から、令和3年改正の特定商取引法が施行されます(送りつけ商法対策は施行済み、契約書面等の電子交付は後日施行)。
主な改正点の一つとして、これまで“書面”で行うこととされていたクーリング・オフが、“電磁的方法”でも行えることになりました。
クーリング・オフとは、一定の取引類型について、契約の申込みや契約締結から一定期間内であれば、無条件で契約の申込みの撤回・解除ができる制度です(なお、通信販売はクーリング・オフの対象外ですが、売買について法定返品制度があります)。
“電磁的方法”としては、電子メールのほか、アプリ上のメッセージ機能、ウェブサイトにおけるフォームを用いた通知、FAXも含まれます。
事業者からすると、書面だけでなく、電磁的方法によりクーリング・オフの通知がなされることを前提として、もれなく適切に対応できる体制を整える必要があります。
例えば、消費者に交付する書面に送付先のメールアドレスを明記するとか、ウェブサイト上に通知フォームを設けておくといった方法が有効です。
また、特定の方法に限定する特約を設けることも考えられますが、不合理な内容の限定を加えた場合には、消費者に不利な特約として無効とされるおそれもあります。
その2. 通信販売についての規制が強化される
通信販売に関する規制も強化されました。
その背景には、いわゆる“サブスク”等の普及に伴って、実際は定期購入契約であるにもかかわらず、そのことを秘して契約を締結させるといった詐欺的な契約が急増している実情があります。
改正法では、通信販売において、事業者所定の書面又はインターネット等を利用する方法により事業者が消費者から申込みを受ける場合を「特定申込み」と定義し、事業者は、特定申込みを受ける際、その申込書面又は申込画面に、商品等の分量や広告における表示事項を記載しなければならないこととなりました。
この表示義務に違反した場合には、業務改善指示や業務停止命令といった行政処分のほか、罰則の対象となります。
また、表示義務違反により消費者が誤認して特定申込みをした場合には、申込みの意思表示を取り消すことができることとされました。
サブスクに限らず、通信販売を行う事業者は、表示義務に違反していないか点検が必要です。
最後に一言。
日々新しいビジネスモデルが生まれていますが、法律は後追いながら消費者を保護する方向で改正されており、対応が求められます。
悪い評判はクーリング・オフできない。
一新総合法律事務所では、「契約書のリーガルチェック」「取引先とのトラブル」「事業承継」「消費者クレーム対応」「債権回収」「コンプライアンス」「労務問題」など、企業のお悩みに対応いたします。
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