問題社員対応
問題社員対応の3つのポイント
社内の問題社員に対応するとき、確認するべきポイントが3つあります。
ポイント1 「誰が」問題を起こしたのか?
まずは、誰が問題を起こしたのかという点です。
当たり前ですが、何もしていない人を処分することはできません。
この点は、横領や情報漏洩等の不正行為のケースで問題となり得るでしょう。
また、何者かがネット上の掲示板に内部の者しか知りえないことを書き込んだようなケースでも問題となり得ます。
ポイント2 「どのような」問題を起こしたのか?
次に、具体的にどのような問題を起こしたのかという点です。
悪質性の程度や頻度なども重要な要素となります。
ポイント3 どのような「手段」を採るべきか?
最後に、社員が問題を起こしたとして、どのような手段によって対応すべきかという点です。
手段としては、通常の注意・指導や懲戒処分があります。
会社に損害が発生していれば、損害賠償請求をすることもあり得るでしょうし、犯罪行為が行われた場合には刑事告訴をすることもあり得るでしょう。
とりうる「手段」の分類と注意点
法的処分とそれ以外の分類
手段には、法的効果を伴う手段とそうでない手段があります。
前者には懲戒処分や普通解雇が当てはまりますし、後者には、通常の注意・指導が当てはまります。
「法的効果」というのは、たとえば、減給処分で言うところの賃金が下がること、解雇で言うところの職を失うことがそれに当たります。
法的効果が生じる処分は、裁判でその適法性・有効性を争うことが可能ですので、後から違法と判断されたり、場合によっては損害賠償を請求されたりするリスクを伴うことになります。
単なる注意・指導の場合には、それ自体を違法・無効と言われることはありません(注意・指導がパワハラに当たるような場合は別ですが)。
懲戒処分の分類
懲戒処分は、さらに、戒告・譴責、減給、出勤停止、懲戒解雇に分類されます。
戒告・譴責は、懲戒処分として行う注意・指導です。
懲戒歴にとして記録されることやその懲戒歴が賞与の算定、昇進の判断等に影響されることが、単なる注意・指導と異なります。始末書の提出を伴うこともあります。
減給は、賃金の額から一定額を差し引くことです。
出勤停止は、制裁として就労を一定期間禁止することです。停止期間中は、賃金が支給されず、勤続年数にも算入されないのが通例です。
懲戒解雇は、懲戒として解雇を行うことです。
解雇予告(ないし解雇予告手当)が不要であることや退職金の全部または一部の不支給もあり得ることが、普通解雇と異なります。
懲戒処分の注意点
懲戒処分はいつでもできるわけではありません。
むやみに懲戒処分を行うと違法と判断されるリスクがあります。
懲戒処分を行うには就業規則に定められた懲戒事由に該当することだけでは足りず、さらに企業秩序に違反したこと及び懲戒処分を行うだけの社会的相当性が必要です。
具体例
ここからは具体例をみていきます。
遅刻・欠勤が多い社員
遅刻・欠勤が多い社員に対しては、
①遅刻・欠勤の理由の説明を求める、
②理由が合理的でなければ改善を促す、
③改善の機会を与えても改善されない場合は、懲戒処分等を検討
というステップを踏む必要があります。
裁判例の中には、1年間に欠勤27日、出勤した252日のうち99日は遅刻早退の者を解雇したという事例で、他のより軽い処分をとったことがなく反省の機会を与えずに会社から排除したとして、解雇は無効と判断されたというものがあります。
また、宿直勤務の際、2週間の間に、寝坊をして定時ラジオニュースを放送することができなかったという放送事故を2度発生させたアナウンサーを解雇した事案について、解雇無効と判断した裁判例もあります。
いずれの裁判例においても、いきなり解雇という重大な手段をとったことが違法性の根拠の一つとしてあげられています。
部下に対する言葉遣いが乱暴な社員(上司)
このようなケースでは、上司と部下の言い分が食い違っていることが多いので、双方の言い分を丁寧に淡々と聴き取ることが重要です。
他に見聞きしている社員がいれば、その者からの聴取も必要でしょう。
人格否定的な暴言が継続して行われているような場合で、注意・指導しても止まないようであれば、懲戒処分の検討も必要でしょう。
裁判例においては、他の社員がいる前で、「ばかやろう」と言ったり、別室で「三浪してD大に入ったのにそんなことしかできないのか。結局大学でても何にもならないんだな」と言ったりする等した行為がパワハラと認定されています。
さいごに
このように、問題社員の対応には、丁寧な調査、きめ細かい対応、正確な判断力が求められます。
判断に困ることがありましたら、いつでも私たちにご相談ください。