企業利益を守るための不正競争防止法
不正競争防止法とは
事業者の経済活動に深く関わる法律の一つとして、不正競争防止法という法律があります。
不正競争防止法は、その名前のとおり、経済活動における「不正」な「競争」を「防止」するための法律です。
では、不正な競争や公正な競争とは何なのでしょうか。
一般社会において事業者は、ライバル事業者との間で、顧客獲得のための競争を絶えず行っています。
この顧客獲得のための競争については、価格、品質またはサービスの質といった面で行われるのが公正とされており、それらの面によらない競争のうち一定のものが、不正な競争として法律で禁止されています。
不正競争防止法によって規制されている行為のうち、いくつか例を取り上げ、その概要を解説いたします。
不正競争防止法によって規制されている行為の例
周知な商品等表示主体の混同
「他人の周知済みの商品等表示と同一または類似した商品等の表示を利用して、その他人の商品等と混同を生じさせる行為」は、不正競争防止法によって禁止されています。
このような行為がなされると、上記の「他人」がそれまでの営業努力によって獲得してきた営業上の信用が、他の事業者によっていわばただ乗りされてしまい、顧客を奪われる危険性があります。
また、同一または類似の商品等が劣悪なものであった場合は、模倣された元の商品等まで信用を損なわれかねません。
そこで、元の商品等との混同を生じさせる行為を法律で規制するものです。
過去の例では、事業者Aが、松葉がにを模した大きな動く看板を掲げてかに料理店を営んでいたところ、同一または近接する地域において事業者Bがその看板と酷似する看板を掲げてかに料理店を営んだという事案において、裁判所は不正競争にあたると判断して、Bに対して看板の使用差止めと損害賠償を命じました。
著名な商品等表示の冒用
「他人の著名な商品等の表示と同一または類似の表示を、自己の商品等の表示として使用する行為」も、不正競争防止法によって禁止されています。
商品等の表示が、2に記載した「周知」を超えて、「著名」、すなわち極めてよく知られているという状態になると、その表示自体が強い顧客誘引力をもつ場合があります。
このような著名な表示と同一または類似のものを他の事業者が使用すると、2で記載したと同様にただ乗りを許すこととなってしまいます。
また、元の事業者の努力により表示が著名となって強い顧客誘引力を獲得したにもかかわらず、表示と元の事業者との結びつきが希釈化されてしまいます。
そこで、著名表示と同一または類似の表示の使用を法律で規制するものです。
過去の例では、事業者Cが「○○○ミンA25」という名称でビタミン製剤を製造販売していたところ、事業者Dが「○○○ビッグA25」という名称のビタミン製剤を製造販売したという事案において、裁判所は不正競争にあたると判断して、Dに対して名称の使用差止めと損害賠償を命じました。
商品形態の模倣
「他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡もしくは貸渡しのために展示し、輸出しまたは輸入する行為」も、不正競争防止法によって禁止されています。
これは、上記の「他人」が商品の形態を作り出すまでには資金や労力を投下していることから、それを模倣(他人の商品の形態に依拠して、実質的に同一の形態の商品を作り出すこと)して譲渡等することを、不正なただ乗り行為として規制するという規定です。
ただし、「商品の機能を確保するために不可欠な形態」については、独占的利用を認めると他者が全く市場に参入できなくなってしまうことから、保護の対象とはなりません。
また、この模倣についての不正競争防止法による保護期間は、元の商品が日本国内において最初に販売された日から3年間にとどまります。3年の期間があれば、先行者は投資を回収することができ、ただ乗りの防止として十分である、という趣旨です。
営業秘密の保護について
不正競争防止法は、営業秘密、すなわち、事業者の内部において秘密として管理され、有用であり、かつ公知されていない技術上・営業上の情報について、それを他人が不正に取得すること及び不正取得された営業秘密を使用・開示することなどを、一定の条件の下で禁止しています。
営業秘密の例としては、顧客名簿、仕入先リスト、製法・製造ノウハウ、実験データなどが挙げられます。
これらに代表される営業秘密は、事業者の経済活動にとって非常に高い価値を有するものであることから、その不正な取得、使用、開示等を法律で規制しているものです。
これらの営業秘密につきまして、近年では特に、従業員の転職に伴って社外に流出し、使用されるというケースが問題となっています。
おわりに
以上、不正競争防止法の規制対象となる不正競争行為の一部につきまして、概要を述べました。
ただし、実際にとある行為が不正競争行為に該当するかどうかにつきましては、本稿に記載し切れなかった様々な判断要素に基づいて、詳細かつ具体的な判断がなされることになります。
他の事業者の不正競争行為によって自己が不利益を受けていると考えられる場合や、今後企画している事業活動が不正競争行為に該当してしまわないか心配な場合などには、ご遠慮なく当事務所の弁護士にご相談ください。
詳細な事情を伺い、相談者様を守るためのアドバイスをいたします。
コンプライアンスについては、こちらもご覧ください。