業種の異なる事業を複数営んでいた企業が、法人破産と事業譲渡を実現した事例

<相談前>どんな事で困っていたのか

建設業と介護施設運営を行っていた株式会社からの依頼です。

数代にわたり、長年建設業を営んでいましたが、10数年前から慢性的に経常損失を計上するようになっていました。

建設業のみでは会社の維持が困難と判断した当時の代表者が、数年前に介護事業に参入し、2足の草鞋で事業を継続していました。

 

もっとも、介護事業の収益が伸び悩む中、建設業の損失を賄うには至らず、債務額は増加の一途をたどっていました。

 

直近ではいよいよ万策尽き、資金繰りにも窮し、代表者は会社の整理を決断せざるを得ませんでした。

他方、介護施設の利用者の保護のため、介護施設の運営をなんとか継続できないか方法を模索していました。

<相談後>状況はどのように変わったのか

準備期間はほとんどなく、介護事業の閉鎖も現実的に考えなければならない状況でしたが、幸運にも介護施設を譲り受けても良いという企業を見つけ出すことができました(代表者の人脈で見つけ出された支援企業でした。)。

当事務所の弁護士は相談会社の代理人に就任し、事業譲渡実現のため、ステークホルダーとなる債権者と秘密裏に交渉を重ねました。

ステークホルダーの理解を得るため、不動産鑑定士等と連携を取りながら、債権者向け説明資料を作成し、債権者の説得を試みました。

 

最終的に、ステークホルダーからの理解を得ることができ、事業譲渡を実行させることができました。

その後、速やかに相談会社の法人破産の申立を行いました(関係する債権者が金融機関以外にも多数存在したことから(公租公課庁も一部あり。)、特定調停等の手続は行いませんでした。)

 

破産手続開始決定後は、裁判所・破産管財人に対し、上記の説明資料等を駆使し、事業譲渡が不当に廉価でなされていないこと、債権者を害するものではないことの説明を丁寧に行いました。

結果として、事業譲渡の有効性に疑問が呈されることなく、手続を進行させることができました。

 

弁護士からのコメント(見解)

本件では、事業を引き受けてくれる企業が見つかったことが最大のポイントでした。

また、事業譲渡や債権者との交渉は、会社経営者ご本人が行うことは大変困難であり、他方、他士業では交渉を行うことができませんので、弁護士の介入が必要不可欠となります。

 

事業譲渡に関連して、当該企業の価値を適正に評価し、債権者等と交渉することが不可欠ですので、不動産鑑定士や公認会計士との連携も必要となります。

 

この案件は、支援企業の出現という幸運に恵まれた事案でしたが、可能であれば、資金ショートの具体的な危険が発生する前の時点から、事業譲渡を十分に検討できていればより良かったと考えられます。