120 年ぶり!民法大改正 重要ポイント解説 vol.5~債務不履行に基づく契約解除~

 

民法改正重点解説の第5回目です。

 

前回の、債務不履行に基づく損害賠償の解説に続き、今回は、債務不履行に基づく契約解除について解説します。

債務不履行に基づく契約解除

(1)ア 催告解除につき、旧民法541条は、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。」と定めており、この条文について判例法理が確立していました。

 

イ 新民法541条は、本文は旧民法541条と同様ですが、ただし書として、「ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。」とし、軽微な債務不履行の場合には、催告による解除ができない旨を定めました。

 

また、旧民法543条ただし書は削除されたので、契約の解除をするために債務者の帰責事由は不要です。

 

(2)ア 次に、無催告解除ですが、旧民法下で規定があったのは、定期行為の履行遅滞による無催告解除(旧民法543条)と履行不能による無催告解除(旧民法542条)のみでした。

 

イ 新民法で無催告による契約全部解除が認められるのは、①債務全部の履行不能、②債務者の債務全部の履行を拒絶する意思が明確な場合、③債務一部が履行不能又は債務者の債務一部の履行を拒絶する意思が明確な場合であって残存債務部分のみでは契約目的を達成できないとき、④定期行為の履行遅滞、⑤①ないし④以外の場合であって催告をしても契約目的を達成できる履行がなされる見込みがないことが明らかであるとき、の5つです(新民法542条1項1号ないし5号)。

 

ウ また、無催告による契約一部の解除が認められるのは、①債務一部の履行不能、②債務者の債務一部の履行を拒絶する意思が明確な場合、の2つです。

 

エ 債務者の履行拒絶の意思が明確な場合に、無催告解除が認められる点が旧民法と大きく異なる点です。

 

ただし、「拒絶」の意思が「明確」であるか否かについては、評価の問題になりますので、口頭ではなく書面で残っていた方が、後日の争いを防止できると思います。

 

次回は、債務不履行に基づく契約解除のポイントを取り上げます。

 

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 下山田聖
<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2018年2月5日号(vol.217)>
※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。