債権回収

第1 債権回収をする場合の留意点

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1 債務者の所在の確認

貸金や工事代金等の金銭債務を支払うことができなくなった債務者は、ときに行方をくらませることがあります。

弁護士に依頼して任意の交渉をするにしても、訴えを提起するとしても、債務者の現住所や連絡先が分からなければ、難航することは必至です。

 

弁護士が受任した事件であれば、携帯電話番号から請求書送付先住所の開示を受けたり、住民票、戸籍をたどったりする等して、債務者の現住所が判明する場合もあります。

 

訴訟提起をする際にも、債務者の現住所が不明であれば最終的には「公示送達」という手続によって訴状が債務者に送達されたとみなされることになりますが、裁判所に対してこの手続を採るように求める場合でも、債務者の所在に関して調査を尽くしたが判明しなかったという内容の報告書が必要になりますので、その意味でも債務者の所在を調査しその結果を残しておくことに意味があります。

 

2 債務者の財産の把握

債権回収は、何らかの形で債務者(側)にある財産を、こちらに移転させる手続であるといえます。

そのため、そもそも債務者に財産がない場合には、債権の満足を得ることはできませんし、財産の内容・種類が不明である場合には、調査を尽くしてある程度の目星をつけておく必要があります。

 

典型的には、預貯金債権、その他の債務者が有する金銭債権(売掛金等)、債務者所有の不動産等が財産として考えられます。

 

財産を把握した後であっても、債務者がこれを処分してしまうと、そこから債権の満足を得ることは難しくなりますので、この場合には民事保全手続を利用し、債務者が自由に財産を処分できなくすることも検討しなければいけません。

 

第2 債権回収の手段

1 弁護士による催促

債権者の代理人として、弁護士が債務者に対して通知を送り、金銭の支払について交渉する手続です。

純粋に当事者間での交渉を打ち切り、債権者が弁護士を代理人に立てたということで、債務者としても「支払わないわけにはいかない。」と考える効果が期待できます。

 

また、交渉ではなく、民事保全や訴訟等の手続選択をする際においても、従前の交渉の経緯を踏まえ、迅速かつ適切な検討ができるようになります。

 

2 支払督促手続

支払督促手続は、債務者の住所を管轄する裁判所の書記官宛てに申し立てる手続です。

支払督促が確定すれば、通常訴訟を経て取得した確定判決と同様の効力があるので、強制執行等の手続に進むことができます。

 

ただ、こちらの申立てに対して債務者が異議を出した場合には、当然に通常訴訟手続に移行することになりますので、遠方の債務者に対して行うときには注意が必要です。また、支払督促手続は、公示送達が使えませんので、債務者の所在が分からないような場合には、この手続を選択することはできません。

 

3 保全処分の利用

保全処分とは、民事保全法に基づく手続であり、債務者が財産を処分することを防ぎ、将来の債権回収に備える手続です。

 

どの財産を対象とするかは債務者の財産により様々ですが、預貯金債権の仮差押え、不動産に対する処分禁止の仮処分等を用いることが多いです。

民事保全手続を行ったとしても、現状が固定されるだけなので、これらの財産から債権の満足を得るためには、別途訴訟提起等により確定判決を取得し、強制執行手続を経る必要があります。

 

保全手続により裁判所から仮差押や仮処分の決定が出た場合、1週間以内に債権者側で担保金の供託をすることが必要になります。

 

4 通常訴訟手続

通常訴訟手続は、債権者が原告、債務者を被告として、金銭の支払を命じる確定判決の取得を目指して行う手続です。

 

5 強制執行手続

強制執行手続により、確定判決又はこれに確定判決と同一の効力を有するもの(支払督促、強制執行認諾文言付公正証書等)をもとに、債務者の財産を差し押さえ、そこから強制的に債権の満足を得ることができます。

預貯金債権等の金銭債権の場合には、当該債権の債務者に対して直接の支払を求めることができるようになりますし、不動産等の換価が必要な財産については、強制競売の後、その売却代金のなかから弁済を受けることになります。

 

第3 弁護士による債権回収

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1 相殺による事実上の回収

債務者が取引先である等の関係の場合には、こちらが債務者に支払わなければならない金額と相殺することによって、事実上、債務の弁済を受けた形を実現することができます。

相殺をするためには、双方が互いに金銭債務を負担していること、互いの債務が弁済期にあること、相殺が禁止される債権でないこと等の条件が必要です。

 

相殺を行うには、相殺の要件を満たしたうえで意思表示によることが必要ですが、相殺の意思表示をしたことがあとで争いになることを防ぐため、内容証明郵便を用いて債務者に通知をするのが一般的です。

 

2 担保権の実行

債務者が金銭債務を負担する際に、当該債務者が所有する不動産に抵当権を設定している場合には、金銭債務が滞った後に、その抵当権を実行することができます。

抵当権が実行された場合、当該不動産は裁判所の競売手続によって売却されることになるので、債権者は、その売却代金のなかから優先して弁済を受けることができます。

 

3 債権譲渡

債務者が、売掛金債権等を有しており、その代金の支払があればその分を返済に回すので、もう少し待ってほしいと申入れをすることがあります。

もちろん債務者の言葉を信じて入金まで待つこともできますが、資産状態が悪化した債務者の元に一度入った金銭が、そのままこちらの債務の返済に充ててもらえるのかどうか疑念が残ります。

 

このような場合、債務者が有する金銭債権を買い取り、当該債務者の取引先から直接に支払を受ける、という債権譲渡の手続を採ることも考えられます。

 

債権譲渡の場合、債権者と債務者の間で債権譲渡契約を締結した後、譲渡された債権の債務者である取引先に、債権譲渡の通知を出すことが必要です。

この債権譲渡についても、確定日付のある内容証明郵便で通知しておくことが必要です。

 

第4 一新総合法律事務所の債権回収の特徴

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1 迅速な対応

債権回収では、債務者の財産状況は刻一刻と変化していきます。

特に債務者が事業者であるときには、単に財産状況の悪化のみを理由に支払がない場合には、複数の債権者が入金を待っている状態にある可能性が高いです。

 

このような場合に回収手段を尽くさなければ、債務者は、他の債権者への支払を優先させ、事実上の倒産という形で1円も回収できなくなるという事態もあり得ます。

 

当事務所では、ご依頼をいただいてからできる限り迅速な対応を試み、債務者にとって、依頼者の方への支払の優先順位を上げるよう、活動していきます。

 

2 回収費用リスクの低減

当事務所では、事件を受任する際に、職務遂行の対価としていただく着手金と、その結果に対する対価としていただく報酬との二本立てでの料金設定をしております。

着手金は、原則として、請求金額に一定のパーセンテージを掛けて算出したものでお受けしております。

 

しかし、債権回収のご依頼を受ける場合のほとんどが、債務者が事実上事業を行っていない等、現実の回収可能性が低い場合に、機械的に請求金額で着手金を算出してしまうと、割高になってしまいます。

 

このような場合、法律相談の中で回収可能性を検討した上、着手金を抑え、その分回収できた金銭からいただく報酬の割合を基準よりも高く設定する等、依頼者の方の金銭的負担を考慮した上での費用設定をさせていただきます。

 

3 回収可能性の吟味

現実の回収可能性は、債務者の財産、業務状況等によって大きく左右されます。

当事務所では、法律相談時に、依頼者の方から債務者の現状、資産、業務状況等の情報を丁寧に聴取した上、現実の回収可能性を検討していきます。

弁護士が就任する前の当事者間のやり取りの内容によっては、弁護士を立ててすぐに訴訟を提起したり、保全処分を試みたりするのが適当なケースもあります。

 

第5 弁護士に依頼するメリット

 

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1 交渉が有利になる

「弁護士が代理人に就任した」となれば、よほど紛争に慣れている人でもない限り、多少は身構えるところがあるのが通常です。

もちろん、弁護士が代理人に就任したというだけで解決に至ることはそれほど多くありませんが、「費用を掛けて弁護士に依頼をした」というのが債務者にも伝わりますので、従前のようにのらりくらりと逃げ回ることもできないと思わせることができるかもしれません。

 

また、法的知識や交渉状況をもとに、債務者の具体的な状況に応じた方法選択をすることもできます。

 

2 最適な法的手段の検討

一口に「お金が支払われない」といっても、債務者が金銭を支払わない理由は様々です。

一般的には単に現預金がないことが多いでしょうが、取引相手等の場合には、こちらが売却した商品に問題があった等の理由で支払を拒んでくることもあります。

 

また、現預金がない場合であっても、会社として営業をしているのか、担保になりそうな不動産はあるのか等、状況に応じて選択する手段は異なってきます。

 

3 訴訟提起・強制執行

裁判所を利用した訴訟や、民事保全・民事執行の手続自体は、ご本人でも制度上は利用することができますが、必要書類や書面の作成、証拠提出の方法など、専門的な知見が要求されます。

 

4 他士業(司法書士・行政書士)との違い

弁護士と同じく法的な知識を有する司法書士や行政書士ですが、弁護士とは主たる業務の範囲が異なっています。

司法書士であれば商業登記、不動産登記関係の業務がメインになりますし、行政書士であれば行政の許認可等の手続業務がメインです。

また、司法書士は、一定の要件を満たした場合に簡易裁判所でのみ本人の代理人として訴訟活動をすることができますが、それ以外の場合や行政書士の場合には、そもそも代理人として業務を行うことはできず、あくまでも書類作成の代理・援助ができるのみです。

 

法的紛争の解決を主たる業務としている弁護士とは、権限の範囲もさることながら、そもそもの経験に大きく差が出てくるところだと思います。

 

第6 お問合せ

一新総合法律事務所では、随時、債権回収に関するご相談を受け付けております。

お住まいの地域に応じて、各事務所にお問合せください。

 

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