【Q&A】民事再生手続とはどういうものでしょうか?

 

A.再生計画に基づいて事業再生を図るための手続きです。

 

民事再生手続は、ごく大まかに言えば、再生債権者(公租公課や労働債務等の優先権ある債務以外の買掛金や借入金等があたります。)の多数の賛成を得て、債権カットを含む再生計画に基づいて、事業再生を図るという裁判所の手続きです。

再生の仕方としては、圧縮された負債を分割弁済していく「自力再建型」と、事業をスポンサーに譲渡してその対価を債権者への支払いにあてる「事業譲渡型」とに大別されます。

 

実際には、事業の継続性、手続き費用や返済原資の確保、スポンサーの存在、債権者の多数決による再生計画案の可決、抵当権者の協力など越えるべき数多くのハードルがあります。

また、手続きを進めるにあたり膨大な事務処理が必要となりますが、当事務所は、複数の弁護士と事務職員で対応することで最大限サポートします。

 

以下、民事再生手続の流れについて詳しく説明させていただきます。

 

第1 会社の民事再生手続とは

債務超過に陥った会社が、法的な整理をする方法としては、①任意整理、②破産、③民事再生の大きく3つに分けられます。

このうち、①は裁判所が関与しない手続であり、②と③は裁判所が関与する手続です。

 

開始決定後に破産管財人が選任され、財産の管理処分権が債務者自身から管財人に移転する破産手続と異なり、開始決定後であっても、原則として、債務者が業務遂行権や財産管理処分権を失わないのも民事再生手続の特徴です(法38条1項)。

ただし、この場合であっても債務者には公平誠実義務が課されているので(法38条2項)、必ずしも自由な経済活動ができるということではありません。

 

民事再生手続は事業を継続しながら圧縮された債務を支払っていくことが可能な手続なので、事業の停止を前提としない点が破産手続とは異なります。

 

民事再生手続の場合、圧縮された債務の支払を続けながら、自力で経済活動を行い会社の再建を図る自力再建型と、援助者を見つけ、援助者からの貸付や出資等を受けて再建を図るスポンサー型の2つのパターンが考えられます。

 

スポンサー型で民事再生を行う場合、スポンサーの選定、スポンサーとの契約内容の確認、大口債権者の了解等、事前の水面下での交渉が必要になってきます。

 

第2 民事再生手続開始申立ての要件

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民事再生手続開始申立ての要件は、①「破産手続開始決定の原因となる事実の生ずるおそれ」があること、または②「事業の継続に著しい支障を来たすことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」のいずれかであるとされています(法21条1項)

 

2-要件①「破産手続開始決定の原因となる事実の生ずるおそれ」

法人の場合、破産法上の「破産手続開始決定の原因となる事実」とは、「支払不能又は債務超過」と「支払停止」(「支払停止」の事由が発生したときは、「支払不能」であるものと推定されます。)です。

「債務超過」とは、「債務者が、その債務につき、その財産をもって完済することができない状態」をいうとされています。

 

民事再生申立ては、これらの事情が発生する「おそれ」があれば申立ての要件を満たすことになりますので、破産手続よりも早い段階で申立てをすることができます。

これは、現実に「支払不能」や「債務超過」の事由が発生してからでないと民事再生手続開始申立てができないとすれば、その後の会社の再建が困難になってしまうためです。

 

2-要件②「事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき」

1の要件に加えて、事業継続に著しい支障なく債務を弁済できない場合も、民事再生手続開始申立ての要件を満たします。

例えば、弁済期にある金融機関に対する債務を支払ってしまうと、その後に支払うべき代金債権や給料債権の支払が難しくなってしまうような場合が、これに該当します。

 

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後で述べるように、法人破産や法人民事再生には、個人の場合と比べて、申立代理人弁護士に支払う費用のほか、裁判所が選任する破産管財人(破産の場合)や監督委員(民事再生の場合)に対する報酬が高額になります。

そのため、資金繰りに窮し、会社の財産が「ゼロ」に近くなる前に、取り得る手段を検討しておく必要があります。

 

第3 必要となる費用

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民事再生には、①会社の代理人として申立手続や従業員に対する説明等を行う申立会社の代理人弁護士と②裁判所が選任する監督委員の弁護士が関与しますので、双方に対する費用が必要になります。

 

当事務所の弁護士が申立代理人となる場合の費用は下図【報酬基準】をご確認ください。

 

【報酬基準】※この報酬基準における金額は、消費税を含みません。

負債額 着手金/手数料 報酬金 実費 備考
民事再生 5000万未満

1億円未満

3億円未満

5億円未満

10億円未満

10億円以上

200万円

300万円

350万円

400万円

500万円

600万円以上

200万円

300万円

350万円

400万円

500万円

600万円以上

印紙代・郵券代

予納金(裁判所が定める額…200万円以上)

別に月額報酬を取り決めることがある。

 

 

裁判所に対する予納費用は、負債の総額によって変わってきます。

負債額が5000万円未満であっても200万円程度の費用を予納する必要があります。

この予納金は、後で述べる監督委員やその補助者として選任される公認会計士等の報酬に充てられます。

 

裁判所に対する費用の予納がなければ、裁判所は、支払不能等の申立ての要件があったとしても、その申立てを棄却することとされています(法25条1項1号)ので、費用の支払は、原則として再生手続開始申立てと同時にしておかなければなりません。

 

第4 手続関与者

1 申立会社代理人弁護士

申立会社の代理人となった弁護士は、民事再生手続に至った事情、その後の再生計画(事業収益の見込み、弁済計画等)の策定や事業譲渡の計画(スポンサー探し)、申立てに先立つ従業員への説明会や民事再生手続開始後の債権者集会での各債権者に対する説明等、債務者である会社の代理人として、種々の手続、説明を行います。

 

2 監督委員

監督委員は、民事再生手続が全債務者の公平に資するよう、申立会社の事業活動、資産の処分、債務の弁済等について、これを監督する立場にあります。

具体的には、裁判所が監督命令を命ずる際に、監督委員の同意を得なければならない行為が指定され(法54条1項、要同意行為)、同意を得ずに行われた要同意行為は無効になります。

 

また、監督委員は、申立会社が提出した再生計画の遂行を監督する立場にもあります(法186条1項)。

 

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その他、債権者、担保権者等も民事再生手続に関与し、自身の立場から種々の意見を述べる機会が保障されています。

最終的に再生計画案が認められるかどうかは大口債権者の意向が重要になるので、場合によっては水面化で協議をする必要もあります。

 

第5 申立書提出までの流れ

1 弁護士への相談

売上の減少等により支払や資金繰りが厳しい、今後の事業継続に不安がある、などの事情でお困りの際には、弁護士にご相談ください。

会社資産の状況や支払予定金額、売掛金の入金サイト等を踏まえて、今後の事業継続、会社の清算等について、弁護士がアドバイスをいたします。

 

特に、民事再生手続を選択する場合には、今後の事業収益の見込やスポンサーの有無、破産した場合と比べての配当率等、他の手続を選択した場合とのメリット、デメリットをよく検討する必要があります。

 

2 資料収集

弁護士とのご相談を経て、会社として採るべき方向性が決まりましたら、依頼者の皆さまと弁護士とで共同して、様々な資料を準備する必要があります。

 

民事再生手続の場合、過去3年分の決算書、資産目録、債務一覧等、多数の資料が必要になります。

会社に関する情報については、代表者の方や経理ご担当の方に協力をお願いし、すみやかな申立てが実現できるよう準備していきます。

 

3 申立書の作成

収集した資料をもとに、代理人弁護士が民事再生手続開始申立書を作成します。

申立書の中には、従前の事業内容や経営難のため申立てに至った経緯、開始決定後の事業再生の方向性や資金繰りの見込み等を記載する必要があります。

 

4 裁判所との事前相談

申立書の提出後、すみやかに手続が進むよう、正式な申立ての前に、裁判所に対して事前相談の形で申立書のドラフトを提出し、打合せをすることもあります。

この打合せには、選任予定の監督委員や会社代表者等も出席し、申立てに至った経緯や今後の事業計画について、補充の説明等を行います。

 

5 従業員説明会・債権者説明会

法律上必須というものではありませんが、申立ての前後に従業員や債権者に対して説明を行うことがあります。

従業員にとっては、勤務先の今後について心配があるところですし、債権者に対しても再生手続の今後の見通し等を説明する必要があります。

 

第6 申立書提出から手続終結までの流れ

1 保全処分及び監督委員の選任

民事再生開始申立てと同時に、保全処分の申立てをした場合、裁判所は、法30条に基づき、保全処分を命じることができます(条文上は申立てがない場合でも裁判所が職権で行うことも可能です。)。

申立てをしてから裁判所が開始決定するまでには多少時間がかかるので、その間に、債務者の財産を保全するため、債権者からの仮差押えや債権者に対する弁済の禁止等が命じられます。

 

そのため、保全処分が命じられた場合には、債務者が自身の債務を弁済する必要がなくなり、会社資産の一応の保全が図られることになります。

ただし、公租公課や従業員の給与、10万円以下の少額債務については、弁済が禁止される債務からは除かれるケースが多いです。

 

実務上、保全処分命令と同時に、再生手続の監督委員が選任される運用となっています。

監督委員が選任されると、一定の行為(会社資産の売却、金銭の借入れ、債務免除、スポンサー契約の締結等)については、監督委員の許可がなければ実施できないことになります。

 

2 再生手続開始決定

裁判所が申立書や添付資料を検討した上で、再生手続開始の種々の要件・条件を満たしていると判断した場合には、裁判所は、「再生手続開始決定」を出します。

どのタイミングで決定がなされるかという点については、事前相談の中で確認されることが多いです。

 

開始決定の中では、各債権者が自己の債権を届け出る期間やこれに対する債務者の認否書の提出期限、再生計画案の提出期限等が定められ、これによりスケジュール感を把握することができます。

 

⑵ 再生手続開始決定後の債権者との関係

開始決定がなされた時点で、1の保全処分がなくとも、再生債権者に対する弁済は禁止され(法85条1項)、再生債権者が個別に実施していた強制執行や他の倒産処理手続は中止されます(法39条1項)。

これは、開始決定がなされると、再生債権者全体の公平な取扱いを実現するために、個別の執行手続等がなじまないからです。

 

また、少額債権については、裁判所の許可を受けることを前提に、開始決定後であっても例外的に弁済をすることができます(法85条1項)。

 

⑶ その後の流れ

再生手続開始決定後、申立会社の財産の現状を把握するための財産評定手続(財産目録や貸借対照表の作成)や、事業の買受人がいる場合には当該事業譲渡の実行、事業活動が継続中であれば通常の取引、売掛金の回収等を行い、一箇月ごとに裁判所と監督委員に対して業務概要等の報告を行います。

 

これと並行して、裁判所が定めた期間内に各債権者から改めて自己の債権の届出をしてもらい、同期間の満了後に、申立会社から再生計画案を提出します(法163条1項)。

この再生計画案については、最終的に債権者集会の中で決議が行われます。

①出席議決権者の過半数の賛成と②議決権者の債権総額の2分の1以上の賛成があれば、再生計画案は可決され、裁判所による認可決定がなされれば、当該再生計画案に従った債務の弁済をしていくことになります。

 

第7 まとめ

 

民事再生手続は、事業継続をしつつ現状に即した債務弁済計画を立てることができるという点で、企業の再建に大きなメリットがある手続です。

しかし、債権者の公平のため手続的な厳格さが要求されるので、事前準備から最終的な再生計画の認可に至るまで、専門的な知見や見通しが必要になります。

 

当事務所では、創業40年以上の歴史のなかで、ある程度の規模のある会社について民事再生手続の申立代理人として関与し、数多くの解決実績がございます。

経営者の方で、資金繰りや今後の事業継続にお悩みがある場合には、当事務所までご相談ください。

 

 

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