人工知能(AI)に法人格?

「弁護士今井慶貴のズバッと法談」は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士 今井 慶貴 が2017年4月より月に一度連載しているコラムです。

第4回のテーマ

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。気楽に楽しんでいただければ幸いです。

今回のテーマは、「人工知能(AI)に法人格?」です。

 

その1 AIが著作権者?

AIが、囲碁の世界チャンピオンや将棋名人に圧勝したニュースは記憶に新しいところです。AIは、画像や音楽などのパターン化しやすい分野から急速な発展を見ています。

これまでも、レンブラントの画風を参考にした新作絵画、オーケストラによる演奏が可能な楽曲、劇場での上演が可能なミュージカル、小説などが作られています。

 

著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義しています。単に道具としてのAIであれば、ペンや楽器と同様、道具を使う人間が著作者となります。

しかし、人間の関与は単なる創作開始の指示にとどまり、AIにより自律的に創作された表現で人間の思想や感情が介在していないものには、著作権の発生が認められません。ただ、外見的に両者の区別は容易ではありません。

 

そこで、AIを権利や責任の主体とするため、AIに法人格を与えるという発想が出てくることになります。

 

その2 自動運転による事故の責任は?

少し前に、自動車販売店の店員が、自動ブレーキ付きの自動車に試乗中のお客さんにブレーキを踏むのを我慢するよう指示した結果、人身事故が生じて、店員と運転者が書類送検されたというニュースがありました。

自動運転の技術が発達し、システムが全ての運転タスクを実施する「高度運転自動化」(レベル4)以上が実現した場合、万一、事故が発生した場合の刑事責任は誰が負うことになるのでしょうか?

 

AIのプログラムの作成者が責任を負うのでしょうか。ただ、「ディープラーニング」により自ら学習をしていくAIについて、プログラムの欠陥について作成者に予見可能性が認められるのか、という疑問が生じます。仮に、「漠然とした事故発生の予見可能性があれば過失がある」とすれば、リスクをおそれて実用化は遠くなります。

そこで、自ら成長していくAIは、むしろ人間に近いものとみて、AIに法人格を与えて、AIに処罰や制裁を科すことを考えるべきではないか、という考え方が出てきています。その場合、現行刑法の死刑、懲役・禁固、罰金などといった刑罰体系で対応できるのでしょうか。「プログラムを消去する」「矯正教育を施す」「罰金を支払わせる」などで被害者や社会一般の納得が得られるのか、今のところはちょっと想像できないところがあります。

 

最後に一言

「法律は、いつも技術の後を追う。」