第三者委員会の役回り

「弁護士今井慶貴のズバッと法談」は、株式会社東京商工リサーチ発行の情報誌「TSR情報」で、当事務所の企業法務チームの責任者 弁護士 今井 慶貴 が2017年4月より月に一度連載しているコラムです。

新連載

この“ズバッと法談”は、弁護士今井慶貴の独断に基づきズバッと法律関連の話をするコラムです。気楽に楽しんでいただければ幸いです。

今回のテーマは、「第三者委員会」です。

 

その1 舛添さんのケース

東京都の築地市場から豊洲市場への移転問題は、小池さんVS石原さんという様相を呈していますが、その間に2人くらい都知事がいたのは忘れがちです。今となっては、舛添さんがなんで都知事を辞めたのかもよく覚えていない……人もいるかもしれません。政治資金で“公私混同”があったとしてバッシングされたのでした。

 

やめる間際に、「厳しい第三者の目」として、元特捜検事の「マムシのなんとか」というあだ名の弁護士さんに、第三者委員として調査を依頼したものの、「不適当であるが違法ではない」と連発し、記者会見での応対なども含めて、ますます炎上してしまったことが思い出されます。

 

あくまで推測ですが、第三者の弁護士に「違法性なし」とのお墨付きが得られれば、バッシングも沈静化すると目論んだのかもしれません。しかし、問われていたのは、私的なことに政治資金を使うことのモラルや市民感覚とのずれでした。結果として「違法でなければよいのか」と炎上を拡大させたように思います。後知恵ですが、弁護士に適不適のことには触れさせず、本人から「弁護士からは違法ではないと判断してもらったが、自分としては不適切であったと考えるので全て返金したうえで、残任期の報酬返上で仕事をしたい」とでも表明すれば、もう少し違う展開も……。

 

その2 日本将棋連盟のケース

こちらは去年の秋からの話ですが、日本将棋連盟が「三浦九段のスマホ不正疑惑事件」について元検事総長の弁護士をトップにした第三者委員会を設置して、その結果である報告書(概要版)を連盟のホームページに公表しました。

 

この事件は、竜王戦の挑戦者になった三浦九段につき、渡辺竜王が将棋ソフトを使用した不正行為の疑いを連盟執行部に申し出たのをきっかけとして、三浦九段がいったん申し出た休場届を出さなかったことを理由に、常務会の判断で三浦九段を挑戦者から外し、出場停止処分としたものです。

 

報告書は、①三浦九段の不正行為の証拠は認められない、②本件処分はやむを得なかったが、何らかの補償を検討することが適切である、としました。個人的には、①の精緻な事実認定に比べて、②は連盟の処分を正当化するための結論ありきとの印象を持ちました。この報告書を受けて連盟執行部は理事の減給による幕引きを図りましたが、その後も連盟批判は鎮火せず、谷川会長の辞任(体調不良)、棋士総会での専務・常務理事3名の解任という組織としてボロボロな状態に至ります。

 

 

最後に一言

この分野で著名なある弁護士は、歌舞伎の勧進帳になぞらえ、第三者委員会のことを次のようにたとえていました。至言です。

 

「弁慶が義経を叩く、それで義経は助かる」