株主間対立と会社分割(弁護士今井慶貴)

 

同族会社等において、株主間での経営方針の相違や不和などで、ともに株主であることが困難になるケースがあります。

 

この場合、条件が折り合うならば、一方の株主が株式を譲渡して離脱するのが最も簡単な解決方法です。

 

他方、会社内に複数の事業部門や店舗などがあり、これが分割可能であるような場合には、会社そのものを分けてしまう方法も考えられます。

具体的には「会社分割」という手続きを活用します。

 

例えば、甲株式会社でA事業とB事業を経営しており、株主一郎がA事業を、株主二郎がB事業を引き受けるケースを考えてみます。

 

まず、新設分割によってB事業部門を新会社である乙株式会社に承継させ、その対価として甲社に乙社株式を割り当てます。

甲社は乙社株式を甲社の株主である一郎と二郎に剰余金の配当として分配します。

そのうえで、一郎の有する乙社株式を二郎に、二郎の有する甲社株式を一郎に譲渡します。

これで、一郎・甲社・A事業、二郎・乙社・B事業とうまく分けることができました。

 

以上は一つの方法ですが、こうしたスキームは、会社法上の手続きに加え、税務の観点からの検討も必要になりますので、法務と税務の各専門家の関与のもとに進める必要があります。

 

弁護士 今井 慶貴

 

<初出>

・顧問先向け情報紙「こもんず通心」2014年9月1号(vol.157)企業・団体チーム20

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。