商号続用責任(弁護士今井慶貴)

 

会社がその事業(一定の営業目的により組織化され、有機的一体として機能する財産)を他に譲渡する場合を「事業譲渡」といいます。

 

譲渡する会社を「A社」、譲渡を受ける会社を「B社」とします。

事業譲渡にあたって、B社が「A社」という商号を引き継いで使用する場合(「続用」といいます。)が考えられます。

この場合に注意しなければならないのは、A社の事業によって生じた債務について、B社も弁済する責任を負うことになることです(会社法22条1項。「商号続用責任」)。

 

この責任は、商号を続用するB社がA社の事業による債務も引き継ぐものと誤認しやすいことから、債権者を救済するためのものです。

 

そこで、事業譲渡後に遅滞なく、B社が責任を負わない旨を登記したり、A社とB社から第三者にその旨を通知した場合のその第三者については、B社は責任を免れることができます(同条2項。「免責登記」「免責通知」)。

 

判例では、さらに一歩進んで、「商号」ではなく「ゴルフクラブの名称」を続用した事案や、「事業譲渡」ではなく、「会社分割」における事案でも商号続用責任を認めているものがあります。

 

いずれにせよ、想定外の債務を負うリスクがありますので、名称を続用する際には慎重な対応が必要になります。

 

弁護士 今井 慶貴

 

<初出>

・顧問先向け情報紙「こもんず通心」2014年10月1号(vol.159)企業・団体チーム21

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。