正社員と非正規社員との手当の格差について~ハマキョウレックス事件最高裁判決~(弁護士:五十嵐亮)

弁護士の 五十嵐 亮 です。

 

平成30年6月1日、最高裁にて正社員と非正規社員との手当の格差に関する判決がありました(ハマキョウレックス事件最高裁判決)。

 

皆勤手当てにつき、大阪高裁は適法と判断しておりましたが、最高裁はこの点の判断を破棄し、大阪高裁に差し戻しています。

 

最高裁としては、個別の手当ごとに、「手当の趣旨」を検討した上で、格差が合理的か否かについて判断しています。

 

以下、個別の手当ごとに最高裁の判断を整理いたしました。ご参照ください。

 

■住宅手当
・手当の趣旨:従業員の住宅に要する費用を補助
・差異の合理性:正社員は転居を伴う配転が予定されており、契約社員と比べて住宅に要する費用が多額となる
⇒適法

 

■皆勤手当
・手当の趣旨:運送業務を円滑に進めるためにトラック運転手を一定数確保する必要があることから、皆勤を奨励する
・差異の合理性:正社員と契約社員とでは職務の内容(トラック運転手)は異ならないから、出勤する者の確保の必要性は異ならない。皆勤奨励の必要性は、転勤の有無や将来的な昇進の有無といった事情により異ならない。契約社員については、業績や勤務成績を考慮して昇給することがあるとされているが、皆勤の事実を考慮して昇給が行われたという事情はうかがわれない。
⇒違法

 

■無事故手当
・手当の趣旨:優良ドライバーの育成・安全輸送による顧客の信頼獲得
・差異の合理性:安全運転および事故防止の必要性については、職務の内容によって差異が生ずるものではなく、転勤の有無や将来的な昇進の有無といった事情により異ならない。
⇒違法

 

■作業手当
・手当の趣旨:一定の作業の対価(そもそも対象となる作業が明確でない)
・差異の合理性:職務内容および配置変更の範囲が異なることによって行った作業に対する金銭的評価が異なるものではない。
⇒違法

 

■給食手当
・手当の趣旨:勤務時間中に食事を取ることを要する労働者に対する対価
・差異の合理性:乗務員については、職務内容は異ならず、勤務形態に違いがあるといった事情もない。配置変更の範囲が異なることは、勤務時間中に食事を取ることの必要性やその程度とは関係ない。
⇒違法

 

■通勤手当
・手当の趣旨:通勤に要する交通費の補てん
・差異の合理性:労働契約に期間があるか否かによって通勤費用が異なるものではない。配置変更の範囲が異なることは、通勤に要する費用の多寡とは直接関係するものではない。
⇒違法