120 年ぶり!民法大改正 重要ポイント解説 vol.4~債務不履行に基づく損害賠償~

 

民法改正重点解説の第4回目です。

 

先日、新民法の施行日が、平成32年(2020年)4月1日に決定されました(一部例外あり)。

今回は、債務不履行に基づく損害賠償につき、特に重要と思われる点を取り上げます。

 

債務不履行とは、当事者間の契約によって生じた債務の本旨に従った履行がなされないことをいいます。

債務不履行が生じた場合には、その相手方は、損害賠償請求や契約自体の解除をすることができます。

◆債務不履行に基づく損害賠償

⑴ 旧民法415条は、「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償をすることができる。債務者の責に帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」と定めていました。

 

この規定については、「債務者の責に帰すべき事由」の意味するところや賠償すべき「損害」の範囲が不明であるとの指摘がなされていました。

 

⑵ そこで、新民法415条1項は、「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責に帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」と定めました。

 

これにより、債務者の帰責事由の判断は、「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念」を基準に判断すること、債務者に帰責事由が存在しないことについては、債務者が立証責任を負うことが明確になりました。

 

⑶ また、損害の範囲について、新民法415条2項は、同条1項により損害賠償請求ができる場合において、①「債務の履行が不能であるとき。」(同項1号)、②「債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。」(同項2号)及び③「債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。」(同項3号)については、債権者は、「債務の履行に代わる損害賠償」を請求できると定めました。

 

「債務の履行に代わる損害賠償」とは、債務の本旨に従った履行がなされていたのであれば債権者が得ていた利益(履行利益)についても、これを損害として賠償する請求ができるということです。

 

債務の履行期の前であっても、②によれば、債権者の側としては、契約を解除することなく履行利益の賠償を請求することができます。

 

そのため、債務者の履行を拒絶する意思が明確な場合には、債権者は、契約通りの履行を請求するか、履行利益の賠償を求めるかについて、選択をすることができます。

 

次回は、債務不履行に基づく契約解除のポイントを取り上げます。

 

◆弁護士法人一新総合法律事務所 弁護士 下山田聖

<初出:顧問先向け情報紙「コモンズ通心」2018年1月5日号(vol.216)>

※掲載時の法令に基づいており、現在の法律やその後の裁判例などで解釈が異なる可能性があります。