『予想どおりに不合理』で行動経済学に入門

WEB担当の萩原です。

 

少し古いニュースですが、行動経済学者のリチャード・セイラーが今年のノーベル経済学賞を受賞しました。

私はセイラー教授の実績については何も知りませんが、約10年前に発売されベストセラーとなった行動経済学の入門書『予想どおりに不合理』を興味深く読んでいるところだったので、タイムリーなニュースでした。

 

行動経済学は「経済学と心理学」とも呼ばれており、近年注目されている分野です。

 

 

伝統的な経済学は、自らの効用を最大にするための経済活動を行う者、すなわち「ホモ・エコノミクス」を前提としています。

ホモ・エコノミクスは自分の利益の最大化を追及するために合理的な行動をとります。

しかし人間は必ずしも合理的ではなく、むしろ不合理な行動をとりがちであることを私たちはよく知っています。

 

『予想どおりに不合理』は、人間は生来「不合理」なものであり、それは「予想できる」ものであるという行動経済学の考え方を、具体的にわかりやすく解説しています。

 

たとえば私たちは、友人からの頼まれごとなら頑張るのに、安い報酬ではやる気をなくすことがあります。

これは、人間が「社会規範」と「市場規範」という2つの規範が入り混じる世界を生きているからです。

 

社交性や共同体の必要性といった価値観が優勢な「社会規範」の世界では、無償で他人を助けるのは当然のことです。

しかし、報酬が発生することで、一転して「支払った分に見合うものが得られるか」というシビアな基準が支配する「市場規範」の世界で物事が判断されます。

 

 

考えてみれば、私たちが抱える人間関係のトラブルの大半は、これらの2つの規範が入り混じる場で起こるように思われます。

たとえば「職場」は、まさに社会規範と市場規範とが熾烈に交錯する場です。

 

では近所づきあいはどうだろうか、恋愛関係は、家庭は…と考えていくと、頭が痛くなりそうです。

人間が独りの時間を必要としたり、芸術活動に没頭したりするのは、規範が支配する世界から逃れるためなのかもしれません